ジャズピアニストって多すぎて、誰から聞けばよいかわからない…
まずは絶対に聞いておくべきジャズピアニストを知りたいな
そんなお悩みにジャズ歴10年以上の私がお答えします。
この記事では、ジャズ初心者が必ず聞いておきたい超定番のジャズピアニスト10選を紹介します。
日頃ジャズを聞く人なら、「この記事で紹介するピアニストを知らないなんてあり得ない」・・・それくらい有名なピアニストです。
- ジャズに興味を持って間もない人
- 超定番のジャズピアニストを知りたい人
- ジャズピアノをはじめたいけど、誰を目指すべきかわからない人
この記事を読めば、最低限聞いておくべきジャズピアニストがわかり、ジャズライフが楽しくなること間違いなしです。
ぜひ最後までお読みください。
超有名な海外ジャズピアニスト10選!ジャズ初心者はまずこの10人を聞こう
「ジャズピアノの演奏を聞いてみたいけど、正直何から聞けば良いかわからない」
「ジャズピアノをはじめたいけど、自分が目指すべきピアニストを決めたい」
こんな悩みを持つ人は多いです。
そもそもジャズってアルバムがものすごく多くて、何を聞けば良いか迷いますよね・・・
「名盤○○選!」みたいなアルバムも多く、「もはやどれが名盤なのかもよくわからない・・・」人も多いはず。
そこで、まず初めに聞いてほしい超有名なジャズピアニストとアルバムを紹介したいと思います!
もちろん、紹介したい人は他にもたくさんいますが、それは別の機会に。
ちなみに日本人ジャズピアニストについては別の記事で紹介しているので、ぜひお読みください。
絶対に聞いておきたい海外ジャズピアニスト10人はつぎのとおり(A~Z順)。
それでは順番に紹介します。
Art Tatum(アート・テイタム)
Art Tatum(アートテイタム)はアメリカ(オハイオ州トレド出身)のジャズピアニストです。
1909年10月13日~1956年11月5日。
ほぼ全盲でしたが、そんなハンデを背負ってるとは思えないほどの超絶技巧で聴衆を圧倒させます。
同じく超絶技巧で知られるOscar Peterson(後述)でさえ、”Art Tatumの演奏を聴いてあまりの巧さに絶望し、ピアノに近寄れなくなった”という話はあまりに有名です。
もはやマネすることは諦め、鑑賞用扱いされることもあります(笑)
おすすめアルバム
Bill Evans(ビル・エヴァンス)
Bill Evans(ビル・エヴァンス)はアメリカ(ニュージャージー州のプレインフィールド出身)のジャズピアニストです。
1929年8月16日~1980年9月15日。
日本人ウケも非常によく、人気が高いピアニストです。
ふだんジャズを聞かない人でも、どこかで名前を耳にしたことがあるかもしれません。
Evansの演奏は、”リリカル(叙情的)”な演奏という表現がされます。
叙情的とは、「感情が外にあらわれるような様子」という意味なのですが、これだけだとよくわかりませんよね・・・。
音楽で”叙情的”という言葉が用いられるときは、”憂い”・”もの悲しさ”・”哀愁漂う”といった意味合いを持つことが多いと思います。
もちろん、Evansの演奏が全て叙情的であるわけではないのですが、そのように感じる人が多いと思えば良いかと(後期は割とエネルギッシュ)。
また、”内省的で美しいハーモニー”や”ピアノのタッチ”に魅了される人はとても多いです。
作曲者としても優れていて、WALTZ FOR DEBBY(ワルツ・フォー・デイビー)のようなメロディー・ハーモニーがとても美しい曲をいくつも残しており、今日もセッションでよく演奏されています。
因みにDebbyはBill Evansの姪です、当時まだ2歳だった彼女に書いた曲でした。
そんなBill Evansの取り巻く環境は言葉に表せないほど悲痛なものがありました。
ジャズにおける白人差別、麻薬、盟友ベーシスト”スコットラファロ”の死、元恋人や兄の自殺など・・・
生い立ちに興味がある人はぜひ調べてみてください(いつか書くかも)。
おすすめアルバム
Bud Powell(バド・パウエル)
Bud Powell(バド・パウエル)はアメリカ(ニューヨーク出身)のジャズピアニストです。
1924年9月27日 – 1966年7月31日。
音楽一家に生まれ、弟には同じくジャズピアニストのRichie Powell(リッチー・パウエル)がいます。
さて、話を戻しましょう。
Bud Powellは他の多くのジャズミュージシャンに多大な影響を与え、現在のピアノトリオの形式(ピアノ、ベース、ドラム)を生み出した祖とも言われています。
Be-Bopが好きなら絶対に外せないジャズピアニストで、どんどん前に進むドライブ感あふれる演奏に釘付けにされる人は多いです。
TEMPUS FUGITのような激しい曲からI’LL KEEP LOVING YOUのような甘美な曲まで作曲しており、その作曲センスもずば抜けていることがわかります。
Bud Powellの絶頂期は1940年代後半~50年代前半と比較的短いです。
それ以降は多くのジャズミュージシャンと同様、麻薬と酒で身を滅ぼしていきます。
さらにBud Powellの場合は、”警官による暴行”、”精神疾患治療で電気ショック療法”により、余計に指が回らなくなったと言われています。
とは言え、1960年代前半の演奏は絶頂期には劣るものの、”刺々しさが無く、歌心ある演奏”も残しています。
そんなBud Powellですが、彼の逸話には面白いものがあるので一つ紹介します。
逸話を読む
ある日、サックス奏者Sonny Stitt(ソニー・スティット)とBudがレコーディングする機会がありました。
Prestige(プレスティッジ)というレコード会社の企画によるものでした。
このレコーディングでSonnyがBudに対して”偉大なPowellさん”と呼びかけ、太鼓持ちのようなことをしていたようです。
それに気分を良くしたBudは迫力ある演奏を繰り広げることになったのですが、問題はその後です。
他の部屋にいた”ある人物”に、「おい、そこのデブ、表に行ってサンドイッチを買ってこい!」と言い放ちました。
しかし、Budがパシリに使おうとしたその人物こそ、Prestigeの社長Weinstock(ワインストック)でした。
そんな失礼な態度をとるBudに対してWeinstockも怒り心頭。
二度とPrestigeでBudの演奏がレコーディングされることはありませんでした。
この時の演奏を録音したCDジャケットも、なかなかに酷いものでした。
気味が悪い青色の謎のモンスターが描かれ、タイトルもプレイヤーの名前が並んでるだけという粗末なものだったんです。
まあ、Budの自業自得と言われればそれまでですけどね…
しかし、演奏内容はとても素晴らしいので、ぜひ聞いてほしいです!
Sonny Stittも絶好調ですが、Budがソロを途中で奪うということをやらかしているシーンもありますよ(笑)。
おすすめアルバム
Chick Corea(チック・コリア)
Chick Corea(チック・コリア)はアメリカ(マサチューセッツ州チェルシー出身)のジャズピアニストです。
1941年6月12日 – 2021年2月9日。
アコースティックピアノはもちろん、エレクトリックピアノも扱い、ジャズの可能性を押し広げた人です。
演奏ジャンルもジャズにとどまらず、ボサノバ・ロック・クラシックなど多彩です。
Chickの曲で一番有名なのはSpainですが、それ以外にも数多くの名曲を残しています。
作曲意欲は相当高く、しかもクオリティが高いものばかり。
ぜひ色々聞いてみてくださいね!
近年、後進育成にも力を注いでいましたが、2021年に残念ながら帰らぬ人となりました。
おすすめアルバム
Herbie Hancock(ハービー・ハンコック)
Herbie Hancockはアメリカ(イリノイ州シカゴ出身)のジャズ・ピアニストです。
1940年4月12日~現在。
Herbie Hancockは4BeatからFunkまで何でもござれというくらい多彩なプレイヤーです。
しかし、Herbieも最初は苦労したようで、自叙伝では先人の耳コピをしたというエピソードも書かれています。
この本を読んで、どんな天才的プレイヤーも先人の真似から入るのだなと思いました。
Herbieの名曲もまた数多くありますが、MAIDEN VOYAGE(処女航海)は必聴です。
同アルバムに収録されているDOLPHIN DANCE(ドルフィン・ダンス)も大変人気のある曲で、今日のセッションでもよく演奏されます。
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Keith Jarrett(キース・ジャレット)
Keith Jarrett(キース・ジャレット)はアメリカ(ペンシルベニア州アレンタウン出身)のジャズピアニストです。
1945年5月8日~現在。
とにかくピアノの音色が美しい・・・実はクラシック業界にもその名を馳せています。
実際にバッハの平均律クラヴィーア曲集をアルバムで出したり、クラシックも弾けるピアニストです(とある本によると、グレン・グールドが好きらしい)。
Kiethといえば、Gary Peacock(ゲイリー・ピーコック、ベース)、Jack Dejohnette(ジャック・ディジョネット、ドラム)とのスタンダード・トリオでしょう。
このトリオでは、ジャズスタンダードを中心に演奏する活動を30年以上行ってきました。
Keithはコンサートに対して聴衆にも厳格なマナーを求める人でした。
着信音や咳払いがひどいと公演をやめてしまうこともあったそうです。
そんな噂は聞いていたので、キースジャレットトリオの日本ラストコンサートに行った時、オーディエンスでありながらとても緊張した記憶があります(笑)
ちなみに、Keithを初めてCDで聞く人は必ず驚きます。
だってうめき声が録音されているのですから(全部のCDではない)。
特にクラシック経験者の場合、声が録音されていることに抵抗を感じる人が多いようです。
だからといって、Kiethの演奏を聞かないなんて非常にもったいないです!
・・・いや、確かに私も最初は引きましたけど(笑)
意外にすぐに慣れて、今となっては何とも思いません。
余談ですが、私も演奏中は結構声出します💦
おすすめアルバム
残念ながら、Gary Peacockは2020年に他界しました。
Keithも同年、脳卒中に伴う左半身マヒによりピアノが弾けない状態であることを明かしました。
もうこのトリオを生で見る機会は無くなってしまいました…。
Mccoy Tyner(マッコイ・タイナー)
Mccoy Tyner(マッコイ・タイナー)はアメリカ(ペンシルベニア州フィラデルフィア出身)のジャズ・ピアニストです。
1938年12月11日~2020年3月6日。
ピアノをはじめたのは比較的遅く、13歳からです。
近所にBud Powellが引っ越してきて影響を受けたという話もなかなか興味深いです。
Mccoyは初期の録音では、いわゆるストレイトアヘッド(正統派)なジャズを演奏をしています。
しかし、テナーサックス奏者John ColtraneのA Love Supreme(至上の愛)(1964)では、ペンタトニック奏法や4thで積み上げたコードを積極的に用いています。
その後もMccoyはペンタトニック奏法を追求し(速弾き・ポリペンタトニックなど)、”Mccoyといえばペンタトニック”といったイメージ定着することになります。
Keithはインタビュー本で「Mccoyは音がでかいだけ、Milesもそう言っている」とボロクソに言っていますが、ちょっと悪意を感じました(笑)
Mccoyはジャズ界に新たなアプローチを与えてくれたので、その功績はとても大きいと思います。
おすすめアルバム
Oscar Peterson(オスカー・ピーターソン)
Oscar Peterson(オスカー・ピーターソン)はカナダ(ケベック州モントリオール出身)のジャズピアニストです。
1925年8月15日 – 2007年12月23日。
「鍵盤の皇帝」の異名を持つほど、超高速な指裁きを繰り広げ、まさに超絶技巧を扱う人物です。
ややエンターテインメント性の高い演奏スタイルでもありますが、ゴキゲンなプレイに思わず「Yeah!」と口ずさんでしまいそうです。
Oscar Peterson系と言われるピアニストは多く、Benny Green(ベニー・グリーン)やMonty Alexander(モンティ・アレキサンダー)、Peter Beats(ピーター・ビーツ)など名前を挙げるとキリがありません。
…にしても、鍵盤の皇帝って言われるの、ちょっと恥ずかしい気が💦
おすすめアルバム
Red Garland(レッド・ガーランド)
Red Garland(レッド・ガーランド)はアメリカ(テキサス州ダラス出身)のジャズピアニストです。
1923年5月13日~1984年4月23日。
Miles Davisバンドのレギュラーメンバーとして活躍しました。
Red Garlandはピアノトリオも素晴らしいのですが、Milesバンドの”リズム隊”としてのプレイがとても素晴らしいです。
2拍裏・4拍裏に的確にコンピング(伴奏)するスタイルは、躍動感・スピード感を出すのに一役買っています。
元プロボクサーであったので、”ジャブを入れてるかのような(コンピング)”といったような表現がされることもあります。
因みにMiles Davisには「Ahmad Jamal(アーマッド・ジャマル)のような演奏をしてくれ」と言われていたそうです。
言われた側としては少し複雑な気分ですよね…
また、一部のジャズリスナーに”カクテルピアノ”(バーで流れてるような演奏)なんて揶揄されることもあったようですが、これについては全くナンセンスです。
Red Garlandの「的確なコンピング(伴奏)」、「転がるような心地よいタッチで紡ぐフレーズ」は、後世のジャズピアニストにも多大な影響を与えています。
おすすめアルバム
Wynton Kelly(ウィントン・ケリー)
Wynton Kelly(ウィントン・ケリー)はアメリカ(ニューヨーク市ブルックリン出身)のジャズピアニストです。
1931年12月2日 – 1971年4月12日。
「Swing!」と言えばWynton Kellyがまず思い浮かぶくらい、軽快でノリの良いプレイをします。
Blue Michellのアルバム”Blue’s Moods”に参加しています。
このアルバムに収録されているI’LL CLOSE MY EYES(瞳を閉じて)は、大学ジャズ研で必ず演奏するバンドがあるというくらい定番です。
比較的耳コピもしやすいピアニストなので、まずWynton Kellyからマネる人も多いです。
おすすめアルバム
もし今は”良い”と思えなくてもOK!聞き続けているうちに好きになることも
この記事では、超定番のおすすめ海外ジャズピアニストを10人紹介しました。
あなたのお気に入りが見つかると嬉しいです!
もしかしたら上に挙げたピアニストで「あんまり好きではないな~」と思う人もいるかもしれません。
しかし、繰り返し聞いてみたり、期間を空けて改めて聞いてみると、「あれ、実は結構良いかも?」と思えるようになることがあります。
食わず嫌いや、第一印象だけで聞かなくなるのは少しもったいない。
もし、今は好きでなくても、またいつか聞き直してみると新しい発見があるかもしれませんよ。
それでは、一緒にジャズを楽しみましょう♪
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