「即興演奏(インプロビゼーション)ってすごい!!どうやっているんだろう?」
こんな疑問を持つ人も多いのではないでしょうか?
特にジャズやポップスのようなジャンルでは即興演奏がよく行われますよね。
”コード進行さえわかっていれば、その場で弾ける”というのは、ある種の魔法のように映るかもしれません。
そんな即興演奏の仕組み(方法)についてわかりやすく解説します。
即興演奏の仕組みの前に、そもそも即興演奏の時、脳のどの部位が反応するか一緒に学びましょう。
即興演奏時、強く活動する脳部位は背外側部(DLPFC)
以前紹介した「ピアニストの脳を科学する」という本では、即興演奏についてもカンタンに解説されています。
以下、引用です。
ピアニストに即興演奏させると、脳の右側の前頭前野の背外側部(DLPFC)という脳部位が強く活動することがわかりました。(中略)DLPFCは頭の前のあたりにあるのですが、さまざまな役割を担っています。その1つに「複数の行動パターンから、1つを選択する」というものがあります。
ピアニストの脳を科学する 初版113貢より
引用にあるように、即興演奏時は”DLPFC”という脳部位が活発に活動します。
その役割のひとつに「複数のパターンから最適な選択を選ぶことができる」というものがあります。
これについては感覚的にも納得できます。
ジャズの即興演奏中は、いくつかの選択肢が瞬時に頭の中に浮かびます。
ぼんやりとですが、”道筋が見えているような感覚”とでも言いましょうか…。
漫画「ワンピース」でいう”見聞色”みたいなやつですかね?(^_^;)
(ちなみに見聞色とは「少し先の未来が見える能力」のことです)
頭に浮かぶ選択肢は”長いフレーズ”のことも、”本当に短い断片のようなもの”のどちらもあります。
どちらの場合も、”このコード進行ではこのフレーズが使えるな”というのが無意識下に出てくる感じです。
また、即興演奏にはDLPFCだけではなく、帯状回皮質という脳部位も関与しているそうです。
(前略)・・・帯状回皮質という脳部位も活動することが報告されています。帯状回皮質とは、意思や行動を決定するとき、あるいは十分に練習していない動きをおこなうときなどに活動することが知られていますが、これはまさに即興演奏に必要とされる要素です。
ピアニストの脳を科学する 初版113貢より
筆者の主張をまとめると、次のようになります。
「頭の中にあるストックされた音型パターンを選択し、決定することを繰り返すのが即興演奏であり、毎回「無」から新しいものを生み出しているわけではない」
私たちが会話をする時のことを考えるとわかりやすいかもしれません。
言葉を話すときも、話したい内容を予測しながら既に知っている単語・文(言い回し)をうまくつなぎ合わせていきますよね?
それと同じような感覚ではないでしょうか?(と、個人的には思います)
即興演奏(インプロ)の仕組みを図解
さて、即興演奏の仕組みについてもう少し見てみましょう。
上図のように、即興演奏できる人はコード進行に対していくつかの選択肢(パターン)を持っていて、いつでも選択可能な状態なのだと思います。
”引き出しにパターンがしまってあり、必要な時に引っ張ってこれる状態”といえばわかりやすいかもしれません。
楽譜でイメージしたい人向けに、例を作ってみました。
下の譜例はⅠ-Ⅵ-Ⅱ-Ⅴ進行で、ジャズでは頻出のコード進行です(OleoやI Got Rythmnなどの循環が有名)。
※なお、音源についてはジャズのノリまでこだわって作成したものではない点、ご了承ください。
あくまでフレーズ説明用の音源です。
上から1番目と2番目では、赤枠の箇所が異なりますね?
即興演奏ができる人は、このように瞬時に何を弾こうか判断できます。
2番目と3番目の譜例ではオレンジ色の箇所が異なりますが、これもG7に差し掛かる前に瞬間的に判断し、どちらでも選択することが可能です。
4番目の譜例では、3番目の譜例と比べるとさらに大きく変わっていますね。
譜面は本当に一例ですが、こうやって見ると多数の選択肢があることがわかると思います。
このように、過去の経験(耳コピ)や音楽理論の知識を駆使して、瞬時に”その時の”最適解を導くことができるのが、即興演奏の仕組みではないでしょうか?
ちなみに、上のどれを弾いても間違いではありません。
しかし、後ろで鳴っているベースの音や、向かっている方向によってはマッチしないということはあり得ます。
”どれが正解か”ということは、なんとも判断しづらいところです(ゆえに、”その時の”という表現を使いました)。
好みの問題もありますしね(それが個性でもある)。
「じゃあ覚えているフレーズ以外は弾いていないの?」という声も聞こえるので補足しておくと…。
もちろん、そうではありません。
自分の音感を頼りに弾くことも多いです。
しかし、過去に弾いたものや、それを応用したものが出てくる頻度が高いのは想像に難くありません。
それはジャズレジェンドでも同じで、分析してみると結構同じようなフレーズ(手癖)を弾いてたりします。
特に一枚のアルバム中には、似通ったフレーズやアプローチが出てくることが多いです。録音した日が同じor近いというのが理由の一つかもしれません。
キースジャレットのように毎回全く違うフレーズが無尽蔵に出てくる変態級な人もいますが、そのような人は少ないと思います。
しかし、一聴すると”そうとは悟らせない”のが、一流ミュージシャンの凄いところなのかもしれません。
そもそも同じフレーズ使ったからダメなんてこと無いんですけどね。
無理に毎回違うことを弾いても不自然なことになりかません。
即興演奏ができない理由
それでは即興演奏ができないのはなぜでしょうか?
特に初心者の場合、即興演奏ができないことに悩むと思います。
もちろん、私も5000回くらい悩みました。
明日には悩んだ回数が5001回になっていることでしょう(笑)
さて、初心者で即興演奏ができない理由は何でしょうか?
ほとんどの場合、”覚えているフレーズの少なさ”が原因と考えられます。
とにかく初心者の頃は、フレーズを覚えてしまうのが手っ取り早いです。
ということで、ストックフレーズを持ちましょう(いつでも弾けるフレーズのことです)。
その際有効なのが、”耳コピ”か”市販のフレーズ集からお気に入りのものをピックアップし練習する”ことです。
耳コピはぜひやってほしいですが、全くやったことが無いと全然できなくて挫折するというリスクがあります。
その場合、市販のフレーズ集から入るのも良いでしょう。
フレーズを知ることで耳コピがしやすくなることもありますからね。
”鶏が先か、卵が先か”の話みたいですが…。
市販のフレーズ集なら”ジャズ無窮動トレーニング CD付き”が”基礎練”にも”フレーズ練習”にもなるのでおすすめです。
Kindle Unlimited会員なら30日間無料で読めるので、お試しで使ってみたい人にはかなりおすすめです。
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また、Ⅱ-Ⅴ-Ⅰフレーズなどについては私のブログでも紹介しているので参考にしてみてください。
譜面も無料でダウンロードできます。
おまけ:他人と演奏すると、”忘れていたもの”がよみがえる
これは誰かが言っていたのですが、他人と一緒に演奏している時に「あ、そういうアプローチの仕方もあったよね!」と思い出すことがあります。
モノを閉まっているけど、全く開けていない引き出しってありませんか?(笑)
他人と演奏すると、自分が持っていないものを提供してくれることはもちろん、自分が持っていた(忘れていた)ものを思い出させてくれることもあります。
それゆえに、ソロピアノでの演奏とコンボ(バンド)での演奏でアプローチが異なることはよくあります。
単純に、ソロピアノだと何もかも全部自分一人でやらないといけないから、というのも大きな理由ですが…(^_^;)
まとめ
今回の記事では、即興演奏の仕組みについて「ピアニストの脳を科学する」も参考にしつつ解説しました。
また、本書の紹介だけでは少し寂しかったので、さりげなく(?)私の考えも合わせて紹介しました(笑)
・即興演奏は、前頭前野の背外側部(DLPFC)と帯状回皮質の脳部位が強く活動する
・頭の中にあるストックされた音型パターンを選択し、決定することを繰り返すのが即興演奏の基本
・初心者はまず選択肢(パターン)を増やした方が良い
”何が正しいか”という判断基準が無いと、音楽理論を学ぼうが、曲中のモチーフを展開していこうがジャズっぽくならないのは言うまでもありません。
まずは先人を模倣すること。
巨人の肩の上に立つこと。
最初の頃は、特にそれが最も効率的な練習になるのではないかと考えます。
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