ジャズを聞いてみたいけど、そもそもジャズってどんな音楽なんだろう?
クラシックの違いって何?
ジャズピアノを始めたいけど、ジャズについて詳しく知りたいな
そんな疑問・お悩みにお答えします。
ジャズに興味があっても、「そもそもジャズって何ぞや?」という人も多いかと思います。
私も大学のジャズ研に入り、ジャズを始めるまではあなたと同じでした。
そんなジャズ初心者のあなたに向けて、”身の回りのジャズ”や”ジャズとクラシックの違い”についてわかりやすく解説します。
ぜひ最後までお読みください。
ジャズはあなたの身の回りでたくさん流れている!
さて、あなたは普段ジャズを意識的に聞きますか?
ジャズといえば・・・「ルパン三世のテーマ」のイメージ!
あんまり自分から積極的に聞くことは無いかな・・・
おそらくそういう方が大多数だと思います。
しかし、ジャズは街中の至るところで流れています。
カフェ、美容院、居酒屋、バー、本屋・・・などなど。
今では地域密着型のジャズフェスも毎年のように行われ、年々規模も拡大しています。
ジャズの入り口は必ずしも音楽そのものではなく、漫画やアニメから入る人も多いです。
「坂道のアポロン」や「BLUE GIANT」が有名です!(どっちも好き)
ジャズは即興演奏(アドリブ)の音楽、まさに一期一会!
ジャズを”ジャズたらしめるもの”は何でしょうか?
それは、「ジャズが即興演奏(アドリブ)を中心とした音楽である」ということでしょう。
”アドリブ”は、その場で思うままに演奏するという意味です(大まかなルールはありますが)。
まさにその場限りの”一期一会”の演奏なんです。
クラシックでも”通奏低音“のようにアドリブを取ることはありますが、ここでは特に触れません。
ふだん、楽譜通り演奏することに慣れている人にとっては、アドリブでの演奏に憧れを抱く人も多いです。
私も初めてジャズのライブを見たときは、「アドリブで何でこんな演奏ができるんだろう!」とただただ驚きました。
「よし、それじゃアドリブをしてみよう!」と思っても、正直何をしたら良いかわかりませんよね?
ピアノ経験者のほとんどは、「楽譜は読めるけどアドリブで演奏したことはない」という方が大半だと思います。
そんなジャズ未経験者でもアドリブができるようになるための知識を、このブログでは提供したいと考えています。
次回の記事では、ジャズを演奏する上で最低限必要な音楽理論を説明していくので、楽しみにしていてください。
…とはいえ、こんな人もいるかもしれませんね。
「ジャズは確かに弾いてみたいけど、アドリブをしたいわけではないんだよな・・・」
もちろん、それは全く問題ありません。
その場合は、有名ジャズミュージシャンのコピー譜(採譜した楽譜)を購入しましょう!
これもまた、ジャズピアノの楽しみ方の一つだと思います。
おすすめはHAL LEONARDから出版されている楽譜です。
日本の出版社からもいくつか出ていますが、だいたいソロピアノ用にアレンジされていることが多く、原曲と少し違う印象を受けるかもしれないからです。
因みに、採譜することを、transcribe(トランスクライブ)と言います。
採譜した譜面はtranscription(トランスクリプション)
日本人には耳コピという名称の方がなじみがあるかもしれませんが、ほぼ同じ意味です。
ジャズピアノが弾けるとはどういうこと?
ところで、世間一般的に”ジャズピアノが弾ける”とはどのような状態を指すのでしょうか?
残念ながら、いくら過去の名演を完璧に弾けてもジャズピアノが弾けるとは判断されません。
もちろん、それ自体はとても良い練習になりますけどね。
ジャズをやっている人からすると、コピー譜を見ながら演奏ができてもジャズができる人とは思われません・・・。
それでは、どうしたら”ジャズピアノが弾ける”と言えるのでしょうか?
それは「リードシートだけでアドリブできるかどうか」ということになると思います。
リードシート
メロディーとコード進行のみが載っている譜面のこと。
セッションやバンドでの演奏ではこのリードシートを使って演奏をします。
有名な曲(スタンダード)については、リードシートも見ないで演奏することが多いです。
ジャズを演奏する人は、プロ・アマを問わずその日会ったメンバーと、その日限りの演奏を繰り広げます。
これをジャムセッションと呼びます(単にセッションと呼ぶことが多いです)。
もちろん、「楽譜どおり弾くだけで私は満足!」という場合は、それでも全然問題ありません。
ジャズの楽しみ方は人それぞれですからね。
その場合は、ジャズの理論も特に覚える必要はないかもしれません。
ビル・エバンスのような有名ジャズミュージシャンの楽譜はたくさん売られています。
注意ポイント
ジャズに関わらず、音楽理論を知っていると曲の構成・仕組みがわかるようになります。
そのため、学習の効率がケタ違いに変わってきます。
できることなら、音楽理論は学んだ方が良いと思います。
ジャズを練習する時、注意してほしいのは必ず音源を聞いて練習するということです。
ノリやリズムがクラシックとは全く異なります。
音源を聞かないで譜面だけをさらっても、100%ジャズの演奏になりません。
これは断言します。
それでは、クラシックとジャズの違いについてカンタンに解説します。
クラシックとジャズの違いって何?
クラシックとジャズの違いについて簡単に解説します。
まずは、クラシックから見ていきましょう。
クラシックの歴史
クラシックの歴史は古く、中世(5~14世紀)にまで遡ります。
当時のヨーロッパでは協会音楽が盛んで、楽器による伴奏が無い声楽が中心でした(グレゴリオ聖歌など)。
ルネサンス期(15~16世紀)になるとピアノの原型でもあるチェンバロやオルガンなどが使用されるようになります。
チェンバロはピアノと異なり、音は持続せず(指を話したら音がすぐに途切れる)、どんなに強く叩いても、音量はさほど大きくなりません。
クラシックにおけるピアノの登場は、大まかに以下の区分に分けられます。
時代 | 説明 | 音楽家 |
---|---|---|
バロック(17世紀~18世紀) | ピアノやヴァイオリンによる伴奏の発達 音楽家は宮廷に雇われる立場 | バッハなど |
古典派(18世紀~19世紀) | この時代から一般市民に対するコンサートも行われる 音楽理論の体系を確立 | モーツァルト、ベートーベン、シューベルトなど |
ロマン派(19世紀~20世紀) | より自由な音楽の追求。甘美なメロディー、ハーモニーが特徴 | ショパン、ブラームスなど |
近代 | 不協和音も積極的に取り入れ、無調になることも多い | トラヴィンスキー、ラヴェルなど |
それぞれの時代背景・文化に合わせて、クラシックは現代にまで発展しています。
ジャズの歴史
ジャズは1,900年代初頭、アメリカのニューオリンズが発祥といわれています。
ニューオリンズはヨーロッパ各国の植民地争いの場所であり、様々な人種が交わり合う地でした(人種のるつぼ or 人種のサラダボウル)。
そこで、アフリカ由来の黒人特有のリズム(ブルース)と西洋音楽(クラシック)が融合することで、ジャズが生まれたと言われています。
あまり歴史について深く掘り下げても趣旨とはずれるので、サクッと流します。
今日のセッションでよく行われる即興演奏を発展させたのは、アルトサックス奏者のチャーリー・パーカーやトランぺッターのマイルス・デイビスの世代でしょう。
彼らはジャズクラブでの演奏終了後、お互いの技を競うような演奏(セッション)を繰り広げていました。
これがセッションの起源で、現在にも引き継がれるジャズのスタイルとなっています。
ジャズピアノトリオの誕生
さて、ジャズを少しかじったことのある人ならピアノトリオをご存知かと思います。
ピアノトリオ(ピアノ・ベース・ドラム)のスタイルを定着させたのはバド・パウエルと言われています。
この編成は1940年代後半あたりから目立つようになりました。
バド・パウエルは、プレイヤーとして多くの名演を残し、オリジナル曲も個性にあふれています。
絶対に聞くべきピアニストの一人です(大好き)。
さらに、ビル・エバンスやオスカー・ピーターソンといった巨匠がジャズピアノの可能性を押し広げていきました。
クラシック同様、ジャズも様々に形態を変えながら広がっていきました。
ニューオリンズジャズ | 現在のジャズという形態につながる基礎 | ルイ・アームストロング |
---|---|---|
スイングジャズ | ストリングス・管楽器がメインのビックバンドによるジャズ | ベニー・グッドマン、デューク・エリントン、カウント・ベイシー、グレン・ミラー |
モダンジャズ | 即興演奏メインのジャズ。ここから爆発的にジャズの可能性が広がる。 広義でビバップ、ハードバップ、モードジャズなどが含まれる | チャーリーパーカー、バド・パウエル、マイルス・デイビス、ビル・エバンス |
フリージャズ | これまでのジャズの概念に従わない自由な演奏によるジャズ | オーネット・コールマン、アルバート・アイラー、セシル・テイラー |
フュージョン | ジャズと他ジャンル(ロック、ラテン、ポップ等)を融合させた音楽 | ラリー・カールトン、マイルス・デイビス、ハービー・ハンコッ |
ジャズは様々なスタイルがありますが、境界があいまいなところもあって定義づけするのが非常に難しいです。
なお、このブログで主に扱うのはモダンジャズです。
モダンジャズも分類すると様々ですが、今のところ覚える必要はありません。
とりあえずは、ビバップとモードっていうのがあるんだなーってくらいで大丈夫です。
クラシックとジャズの違い
共通することも多く、あまり対立的に扱う必要もないのですが…
あくまで参考程度に以下のようにまとめました。
違う点 | クラシック | ジャズ |
---|---|---|
即興性 | 楽譜に忠実(例外あり) | 即興演奏 |
リズム | テンポが一定ではないこともある(時代による) | 基本的にはテンポは一定(4Beatなど) |
構成 | ソロ~オーケストラ | ソロ~ビックバンド |
即興性
クラシックのピアニストは、譜面を忠実に演奏するというイメージが強いかもしれません。
しかし、そもそもは自作自演し、即興演奏することも多かったようです。
今私たちが弾いているものも、”ある時の演奏”を弟子が書き残したものを弾いてるだけ、という話もあります。
ベートーベンもショパンもリストも、当たり前に即興演奏を行っていたとされています。
時が経つにつれ、曲数も曲の難易度も上がり、弾くことだけが専門のピアニストが増えていったのも無理はありません。
音楽が長い時をかけて”作曲”と”演奏”に分業化されてしまったわけです。
余談
作曲と演奏に分業化されたことが悪いというわけではないです。
演奏に特化していても、十分に素晴らしく感動させてくれるピアニストが多くいるのは、ご存じの通りです。
リズム
語弊を恐れず言えば…クラシックは必ずしもテンポ通りに弾く必要はなく、多少の揺れがあっても個性として許されます(特にロマン派)。
一方、ジャズでは4ビートが中心で、一度始まったら基本的にテンポは変わりません。
クラシックのように、「ここは少しテンポを落として・・・」なんてすると、あっという間に音楽が崩壊します。
これが、ジャズの難しさの一つになっています。
ちょっと弾きにくいところをタメて演奏・・・なんてことをジャズでやったらアウトな訳です。
曲のパート構成
構成自体はクラシックもジャズも大差ありません。
ソロで行うこともあれば、オーケストラやビッグバンドのように数十人体制で演奏することもあります。
しかし、通常のセッションをするのであれば、2~6人くらいまでかなと思います。
また、クラシックピアノの場合、趣味でやるならソロでやるのが殆どですが、ジャズならソロピアノの方がむしろイレギュラー。
ジャズは即興という一面があるため、他の楽器との会話をすることも大事な要素の一つです。
そのため、コンボ単位で演奏することの方が多いです。
ソロピアノの方が自由な分、負担が重くかなり大変&難しいです。
カルテットのように、管楽器などのフロントが入ってくれると、だいぶ負担は減りますね(笑)
やってみるとわかりますが、ピアノトリオでも結構大変なんです…。
奏者が減るほど、難易度は指数関数的に上昇すると思ってください。
ジャズをやるなら音楽理論は学ばないとダメ?
よく、ジャズは音楽理論を学ぶ必要があると言われますが、実際はどうなんでしょうか?
結論から言うと、学んだ方が効率がいいことは確かです(よっぽど天才的な音感やセンスを持っている場合を除く)。
特に、大人から始める場合、吸収力という点ではどうしても子どもには劣るところがあります。
自由な時間も少ないですしね。
しかし、大人の武器は論理的思考力です。
音楽理論を学ぶことで、何をどのように弾けばよいかということをパターン化して学べます。
すると、理解も深まり記憶に定着し、より効率的にジャズを学ぶことができます。
当サイトでは、ジャズを学ぶための教本も紹介しているのでぜひ参考にしてください。
”理論”という言葉については、文字通り捉えるのではなく「大まかなルール」と考えておけばよいと思います。
ルールを知っていれば、ルール上の音を”あえて”弾かず、ルール外の音を弾くという選択もできるようになります。
ルールを知らないでルール外の音を弾くのとは、意味合いがまるで異なります。
感情のままに弾くのも楽しいし、それを否定するつもりはありません。
実際、弾いている最中は理論のことを常に考えているわけではないです。
しかし、ある程度の裏付けがあった方が、弾いてる本人も納得感・説得力をもって音を出せるようになり、結果的に良い演奏に繋がります。
はじめは慣れない用語も多く、大変かもしれません。
しかし、少しずつで大丈夫なので焦らず一緒に学んでいきましょう!
それでは、次回は音名・音程について学びましょう!
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