ジャズピアニスト、ビル・エヴァンス(Bill Evans)は、その豊かな感性と洗練されたピアノプレイで、多くのファンを魅了してきました。
今回は、ビル・エヴァンスの数ある名盤の中から、特におすすめの10枚を紹介します。
各アルバムの魅力や演奏メンバーについても解説するので、ぜひ参考にしてください。
当記事ではビル・エバンスではなく、ビル・エヴァンスと統一して記載しています。
ビル・エヴァンスのおすすめ名盤10選
ビル・エヴァンスのおすすめ名盤10選を紹介します。
本当は紹介しきれないくらいあるんですが、とりあえず最初はこのあたりを聞いてみてほしいです。
1. Portrait in Jazz (1960)
収録曲
- Come Rain or Come Shine
- Autumn Leaves
- Witchcraft
- When I Fall in Love
- Peri’s Scope
- What Is This Thing Called Love?
- Spring Is Here
- Someday My Prince Will Come
- Blue in Green
メンバー
- Bill Evans(ビル・エヴァンス) – Piano
- Scott LaFaro(スコット・ラファロ) – Bass
- Paul Motian(ポール・モチアン) – Drums
ビル・エヴァンスのトリオによる最初のスタジオアルバム。このアルバムでは、スコット・ラファロの革新的なベースプレイとポール・モチアンの繊細なドラムが際立ちます。特に「Autumn Leaves」のアレンジは必聴です。
僕が一番最初に買ったジャズアルバムのひとつで、想い出深いんだぁ。
2. Waltz for Debby (1961)
収録曲
- My Foolish Heart
- Waltz for Debby
- Detour Ahead
- My Romance
- Some Other Time
- Milestones
- Porgy (I Loves You, Porgy)
メンバー
- Bill Evans(ビル・エヴァンス) – Piano
- Scott LaFaro(スコット・ラファロ) – Bass
- Paul Motian(ポール・モチアン) – Drums
ライブアルバムの名作。ビレッジ・ヴァンガードで録音され、エヴァンスの代表曲「Waltz for Debby」を収録。このトリオの完璧なアンサンブルは、一度聴いたら忘れられません。
3. Sunday at the Village Vanguard (1961)
収録曲
- Gloria’s Step
- My Man’s Gone Now
- Solar
- Alice in Wonderland
- All of You
- Jade Visions
メンバー
- Bill Evans(ビル・エヴァンス) – Piano
- Scott LaFaro(スコット・ラファロ) – Bass
- Paul Motian(ポール・モチアン) – Drums
同じくビレッジ・ヴァンガードで録音されたライブ盤。特に「Gloria’s Step」や「Alice in Wonderland」などが印象的で、トリオの一体感が感じられます。スコット・ラファロのベースソロが光る一枚です。
4. Explorations (1961)
収録曲
- Israel
- Haunted Heart
- Beautiful Love
- Elsa
- Nardis
- How Deep Is the Ocean?
- I Wish I Knew
- Sweet and Lovely
メンバー
- Bill Evans(ビル・エヴァンス) – Piano
- Scott LaFaro(スコット・ラファロ) – Bass
- Paul Motian(ポール・モチアン) – Drums
エヴァンスの創造的な側面がよく現れているアルバム。「Nardis」や「Elsa」など、エヴァンスのリリカルなプレイが楽しめる曲が揃っています。トリオの緻密なインタープレイも必聴です。
5. Moon Beams (1962)
収録曲
- Re: Person I Knew
- Polka Dots and Moonbeams
- I Fall in Love Too Easily
- Stairway to the Stars
- If You Could See Me Now
- It Might as Well Be Spring
- In Love in Vain
- Very Early
メンバー
- Bill Evans(ビル・エヴァンス) – Piano
- Chuck Israels(チャック・イスラエルズ) – Bass
- Paul Motian(ポール・モチアン) – Drums
スコット・ラファロの死後、新たにチャック・イスラエルズを迎えたトリオによる作品。特に「Polka Dots and Moonbeams」では、エヴァンスの美しいメロディラインが堪能できます。
6. How My Heart Sings! (1962)
収録曲
- How My Heart Sings
- I Should Care
- In Your Own Sweet Way
- Walking Up
- Summertime
- 34 Skidoo
- Ev’rything I Love
- Show-Type Tune
メンバー
- Bill Evans(ビル・エヴァンス) – Piano
- Chuck Israels(チャック・イスラエルズ) – Bass
- Paul Motian(ポール・モチアン) – Drums
同じくチャック・イスラエルズを迎えたアルバム。タイトル曲「How My Heart Sings!」は明るくリズミカルで、エヴァンスの演奏の多様性が楽しめます。
7. Conversations with Myself (1963)
収録曲
- ‘Round Midnight
- How About You?
- Spartacus Love Theme
- Blue Monk
- Stella by Starlight
- Hey, There
- N.Y.C.’s No Lark
- Just You, Just Me
- Bemsha Swing
- A Sleepin’ Bee
メンバー
- Bill Evans(ビル・エヴァンス) – Piano
エヴァンスがマルチトラック録音で自身と対話する異色のソロアルバム。特に「’Round Midnight」の独特なアレンジは、彼の創造力を感じさせます。
8. At Shelly’s Manne-Hole (1963)
収録曲
- Isn’t It Romantic?
- The Boy Next Door
- Wonder Why
- Swedish Pastry
- Our Love Is Here to Stay
- ‘Round Midnight
- Stella by Starlight
- Blues in F
- All the Things You Are
メンバー
- Bill Evans(ビル・エヴァンス) – Piano
- Chuck Israels(チャック・イスラエルズ) – Bass
- Larry Bunker(ラリー・バンカー) – Drums
ライブ録音によるこのアルバムでは、エヴァンスのエネルギッシュなプレイが楽しめます。特に「Re: Person I Knew」は必聴です。
9. Trio 64 (1964)
収録曲
- Little Lulu
- A Sleepin’ Bee
- Always
- Santa Claus Is Coming to Town
- I’ll See You Again
- For Heaven’s Sake
- Dancing in the Dark
- Everything Happens to Me
メンバー
- Bill Evans(ビル・エヴァンス) – Piano
- Gary Peacock(ゲイリー・ピーコック) – Bass
- Paul Motian(ポール・モチアン) – Drums
新たにゲイリー・ピーコックを迎えたトリオによる作品。「Little Lulu」や「Santa Claus Is Coming to Town」など、エヴァンスらしいアレンジが光ります。
10. Bill Evans at the Montreux Jazz Festival (1968)
収録曲
- One for Helen
- A Sleepin’ Bee
- Mother of Earl
- Nardis
- Quiet Now
- I Loves You, Porgy
- The Touch of Your Lips
- Embraceable You
- Someday My Prince Will Come
- Walkin’ Up
メンバー
- Bill Evans(ビル・エヴァンス) – Piano
- Eddie Gomez(エディ・ゴメス) – Bass
- Jack DeJohnette(ジャック・ディジョネット) – Drums
モントルー・ジャズ・フェスティバルでのライブ録音。特に「Nardis」での即興演奏は、エヴァンスの卓越した技術と感性が光ります。エディ・ゴメスとジャック・ディジョネットのサポートも見事です。
ビル・エヴァンスのアルバムは、どれも彼の個性と才能が存分に発揮されています。
初心者からコアなファンまで、ビルエヴァンスの音楽を楽しむ参考にしてください。
ビル・エヴァンスについて
ビル・エヴァンス(Bill Evans)は、1929年8月16日にアメリカのニュージャージー州プレインフィールドに生まれました。
母親はロシア系でロシア正教会の信者であり、ビルが初めて音楽に出会ったのは教会の荘厳な典礼であったと言われています。
両親はどちらも楽器を演奏しませんでしたが、音楽をやることを推奨していました。
兄のハリー・エヴァンス・ジュニアはピアノ、ビル・エヴァンスはバイオリンを習っていました。
ビルは後にピアノの才能を見出されて、ピアノに転向しました。
幼少期~アメリカ陸軍入隊まで
エヴァンスは6歳からピアノのレッスンを受け始めました。高校時代にはフルートなど他の楽器にも挑戦し、バンドにも参加していました。
1946年にサウスイースタン・ルイジアナ大学に入学し、音楽教育を専攻し、名曲「Very Early」を作曲しています。
大学卒業後はアメリカ陸軍に入隊し、1951年から1954年までの間、兵役に従事しました。
その間、シカゴ近郊のフォートシェリダンにある第5アメリカ陸軍バンドでフルートやピッコロ、ピアノを演奏しました。
ちなみに、この頃に麻薬に手を出すようになったと言われています。
兵役という辛い現実から目を逸らしたかったのかな…
プロとしてのキャリアの始まり
兵役を終えたエヴァンスはニューヨークに移り、ジャズピアニストとしてのキャリアを本格的にスタートさせました。1956年にはデビューアルバム「New Jazz Conceptions」をリリースし、その中の「Waltz for Debby」が初めて録音されました。この曲は後に彼の代表作の一つとなります。
Waltz for Debbyはビルの姪を想って書いた曲です。
マイルス・デイヴィスとの共演
1958年、エヴァンスはマイルス・デイヴィス(Miles Davis)と出会い、その才能を認められてクインテットに加入しました。特に1959年のアルバム「Kind of Blue」での演奏は、ジャズ史に残る名演となり、エヴァンスの名声を確固たるものにしました。このアルバムでの彼のモード奏法は、後のジャズピアノに多大な影響を与えました。
「Kind of Blue」は最も売れたジャズアルバムとしてあまりに有名。
絶対に聞いておきたいですね。
トリオでの成功
マイルス・デイヴィスのバンドを離れた後、エヴァンスは自身のトリオを結成し、数々の名盤を世に送り出しました。
特に1961年の「Portrait in Jazz」や「Waltz for Debby」など、スコット・ラファロ(Scott LaFaro)とポール・モチアン(Paul Motian)とのトリオでの録音は必聴。
このトリオで収録したアルバムは全部で4枚で、「リバーサイド四部作」と言われています。
- ポートレイト・イン・ジャズ
- エクスプロレイションズ
- ワルツ・フォー・デビイ
- サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード
しかし、「ワルツ・フォー・デビイ」と「サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード」を収録した11日後に、盟友のスコットラファロは交通事故でこの世を去ってしまいました。
晩年と遺産
エヴァンスは1970年代にも多くのアルバムをリリースし続けましたが、私生活では薬物依存などの問題に悩まされました。それでも彼の音楽は衰えることなく、1980年9月15日に51歳で亡くなるまで、その美しいピアノプレイで多くのファンを魅了し続けました。
晩年はエネルギッシュなプレイが目立ち、初期とは全然違うので、その点も注目してみるとおもしろいかも。
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